【2025年11月公式ブログ 歯科診療中のアナフィラキシーショックへの対応】
2025.11.05
皆さん、こんにちは。
愛知県 知多郡 東浦町石浜 あしま歯科クリニック歯科衛生士の井上です。
先日、院長および、歯科衛生士全員で参加した勉強会での報告をしたいと思います。
歯科診療中に発生するアナフィラキシーショックは稀ですが、
生命に関わる急性の過敏反応であるため、迅速かつ体系的な対応が不可欠です。
以下に、最新ガイドラインと文献を基にした歯科向けの実務対応をまとめます。
1. アナフィラキシーとは
- 定義:アレルゲンにより複数臓器に急速かつ全身性のアレルギー反応が起こり、生命を脅かす状態。
- アナフィラキシーショック:血圧低下・意識障害を伴う重篤な段階。
- 発症時間:薬剤投与後、数分~30分以内が多い。
- 原因物質(歯科で多い例):
- 局所麻酔薬(リドカイン、メピバカインなど)
- 歯科用抗菌薬(ペニシリン系、セフェム系)
- 非ステロイド系鎮痛薬(NSAIDs)
- ラテックス手袋や器具
- ゼラチン製の止血材、根管治療材(ホルムアルデヒド、水酸化カルシウム系)
2. 初期症状(軽度~重度)


注意:初期症状は軽度でも急速に悪化することがある。二相性反応にも注意。
3. 歯科における緊急対応の基本原則
(1) 速やかな認識・救急呼出
- アナフィラキシーを疑ったら即座に119番通報。
- 自院内スタッフへ緊急連絡、救命蘇生準備。
(2) 患者の体位と酸素供給
- 仰臥位+下肢挙上(約30cm推奨)。

- 呼吸困難時は楽な体位に調整。
- 酸素投与:6~8L/分、必要に応じてフェイスマスク使用。

(3) アドレナリン投与(第一選択薬)
- 筋肉注射(大腿前外側)
- 成人:0.3~0.5mg
- 小児:0.01mg/kg(最大0.3mg)
- 市販エピペン使用可。衣服の上からでも可能。

- 反応が不十分な場合は追加投与。
- 注意:β遮断薬内服者には効果減弱 → グルカゴン静注を検討。
(4) 静脈路確保と輸液
- 等張食塩水またはリンゲル液を5~10 mL/kgを初回5分以内に急速輸液。
- 血圧低下が続く場合は追加静注・持続輸液。
(5) 第二選択薬(補助)
- 抗ヒスタミン薬(H1遮断薬):皮膚症状改善。
- ステロイド薬(プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン):二相性反応予防。
- β2刺激薬吸入:気道収縮改善。
4. バイタルサインの評価
- 血圧、脈拍、SpO₂を頻回かつ継続的に測定。
- 循環虚脱・低酸素は即時対応。
- 徐脈が出現した場合も急変のサイン。
5. 発症後の対応
- 原因薬物・アレルゲンの曝露を中止。
- 気道確保、酸素投与、十分な補液。
- 必要時、心肺蘇生(AED含む)。
- 入院観察(特に二相性反応リスクのある場合):6~24時間。
6. 予防と再発対策
- 既往歴・アレルギー歴の問診・記録。
- ハイリスク患者へのエピペン処方および使用指導。
- 使用薬剤・歯科材料の事前確認・管理。
- 周囲スタッフの教育・訓練(ロールプレイ、エピペントレーナー)。
- アレルゲン回避策、食物・薬剤のチェック。
7. 鑑別診断のポイント
- 血管迷走神経反射との違い:膚皮症状の有無、発症状況。
- 心原性ショック、肺塞栓などと重複する場合もあるため、バイタル・症状評価し併存リスク考慮。

推奨参考資料
- 日本アレルギー学会「アナフィラキシーガイドライン2022」
- 全身管理歯科協会 AneStem「歯科医院でのアナフィラキシー」
- 日本麻酔科学会「アナフィラキシー実践ガイド」
- 厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル」
緊急時の実務チェックリスト(歯科用簡易版)
- 患者の意識・呼吸・循環評価
- 救急要請(119番)
- アドレナリン筋注(エピペン)
- 仰臥位+下肢挙上/酸素投与
- 静脈路確保+急速輸液
- 補助薬投与(抗ヒスタミン、ステロイド、β2吸入)
- バイタルの継続監視
- 二相性反応に備え入院・経過観察
日曜日に、スタッフ一同で参加することにより、共通認識として再確認することができました。
診療中以外の場でスタッフと過ごす時間はとても貴重な時間でした。
参加の機会を与えてくださった院長に、大変感謝します。
あと、講習会後のスタバごちそうさまでした。
以上をもちまして、勉強会の報告とさせていただきます。
